猫の乳腺腫瘍に対する片側乳腺摘出術

症例 メインクーン、6歳、メス

右第3乳腺部にしこりを見つけ、来院。大小2つのしこりがあったので、細胞診検査を実施。
細胞診検査結果 : 乳腺癌の疑い
レントゲンで明らかな肺への転移像も無いため、右片側乳腺摘出術及び子宮卵巣摘出術を行った。

乳腺腫瘍の手術は、範囲が広ければ広いほど痛い手術です。
術前から術後の疼痛管理(ペインコントロール)がとても大切です。
術後回復期の食欲が維持できるように、痛みを管理します。
この症例の子も、手術が終わった日の夜ご飯は完食してくれました。

猫の乳腺腫瘍について

猫の乳腺腫瘍はその90%が乳腺癌、つまり悪性腫瘍であると報告されています。 つまり、猫で乳腺の部分にしこりが見つかった場合、悪性腫瘍であることを念頭に診断・治療を進めなければなりません。 今回の症例は、幸い良性腫瘍であったため抗がん剤などの追加治療は必要ありませんでしたが、悪性腫瘍であった場合は、術後の抗がん治療の併用も検討します。

消化管内異物

症例 M・ダックス、1歳、オス

食欲や元気はいつも通りだったが、突然、血液が混じった胃液を嘔吐した。
来院時は、腹痛があり吐物に混じる血液も多かったため、血液検査とレントゲン検査を実施

  • レントゲン画像
    右腹部に2センチ弱で
    円盤状の異物を確認。
    すぐに造影検査を実施したところ、
    腸管内異物だと判明し、
    緊急手術を実施した。

腸切開により異物を摘出。異物は、コートなどのボタンでした。
ボタンの突起部分が腸壁を傷めており、発見が遅れた場合、腸が破れていた可能性がありました。術後は、順調に回復し嘔吐も無く良好です。

腹腔内潜在精巣の摘出

症例 ポメラニアン、3歳、オス

1歳を過ぎても片側の精巣下降が認められず、他院にて鼠径(そけい)にあると診断されていた。しかし、当院では鼠径部に精巣を確認できず、腹腔内の可能性を示唆し手術を実施。
精巣は、腹腔内に存在した。
※鼠径…内股のところ

腹腔内には、未発達の精巣がありました。
陰嚢(いんのう)に下降していた正常な精巣と比較すると小さいのがわかります。

潜在精巣とは

性成熟の時期を過ぎても、陰嚢内に精巣が下降していない状態のこと。
片側だけでも陰嚢内にあれば精子は作ることができますが、潜在精巣は、遺伝病であるため繁殖はしない方が良いとされています。
潜在精巣は、正常犬に比較して腫瘍化するリスクが13倍になります。
その多くが悪性腫瘍であり、気付いた時には手遅れになるケースが多いのです。

肛門直腸移行部に発生した腫瘍摘出

症例 Mix犬、12歳、オス(未去勢)

以前からおしりに小さいできものがあったが、半年程前から急激に大きくなってきた。
排便時にピンポン玉程の腫瘍が飛び出てきて出血を伴い、痛みもある状態。
年齢的に麻酔に抵抗はあるが、この痛みから解放してあげたいという希望から、緩和的手術としての腫瘤摘出を実施した。

病理検査結果 : 高分化型平滑筋肉腫

術後に数日、出血が認められましたが、その後は排便障害もなく、痛みもとれて良好です。
しかし、悪性腫瘍の診断が下っているため、再発などの経過を観察していきます。

平滑筋肉腫とは

平滑筋細胞由来の腫瘍です。病理学的に『肉腫』と診断されるものは、悪性腫瘍に分類されます。
悪性腫瘍というカテゴリーの中でも、細胞の分裂速度や形から、より悪性度の高いものを「低分化型」、悪性度の低いものを「高分化型」と言います。つまり、今回の症例は悪性腫瘍であるが、すぐ再発したり転移などの心配は、比較的低いということです。

子宮蓄膿症と子宮平滑筋腫を併発した症例

症例 チワワ、10歳、メス(未避妊

1週間程前からおりものが多く、3日前から食欲がなくなり来院。
腹部がかなり膨満しており、エコー検査を実施すると子宮内に多量の液体貯留が認められ、貧血も進行していることから緊急手術を実施した。

摘出された子宮は、ゴツゴツとしており、硬い腫瘤を形成していました。
通常、チワワの子宮は0.5cm程度の太さで7~8cm程の長さしかありませんが、この子は長さ14cmのボールペンと比較してもかなり拡大しているのがわかります。

病理検査結果 : 多発性平滑筋腫及び化膿性子宮内膜炎

術後は、貧血は残るものの元気・食欲が回復し、現在は良好です。

子宮平滑筋腫とは

子宮の平滑筋細胞が腫瘍化し、増殖したものです。
これは未避妊のメス犬でよく見られ、卵巣ホルモンの影響が関連していると言われています。
良性の平滑筋腫は、手術で摘出することで予後は良好です。

肛門部腫瘤摘出術

症例 チベタンスパニエル、9歳、オス(未去勢

10か月程前に、肛門部に5mm大のできものを発見した。
大きくなったり小さくなったりを繰り返していたが、最近急激に大きくなり、出血をしているため生検も含めた切除手術を実施した。
また、肛門周囲腺腫の可能性を考慮し、去勢手術も同時に行った。

病理検査結果 : 肛門周囲腺腫

術後は、排便障害もなく良好です。

肛門周囲腺腫とは

肛門周囲腺腫とは、中高齢の去勢をしていない犬で発生が多い腫瘍です。
その発生には、アンドロゲン(雄性ホルモン)が関連していると考えられていますが、去勢した雄や雌にも発生します。良性腫瘍でも、こぶし程の大きさになることもあります。
未去勢の雄犬の場合は、手術時に去勢手術を同時に行うことで、その後の再発や新たな発生を軽減するとされています。

小眼球摘出術

症例 雑種猫、2歳、オス

拾われた頃より右目が小さく、結膜炎などの感染を繰り返していました。
視覚はすでに無く、度重なる感染と皮膚炎で、生活の質が低下していたため、眼球摘出術を実施した。

術後は、しばらく漿液(しょうえき)が見られたが、大きな合併症もなく良好です。
小眼球は、生まれつきの奇形であり、遺伝性疾患と言われています。

歯石除去

症例 トイ・プードル、4歳、オス

重度の口臭と歯石の付着があり、歯肉炎が認められた。
歯周ポケットも深くなっていたため、超音波スケーリングを実施。